ITが教えてくれた~見えないことをネガティブに感じる必要がないということ|直也の視覚障害とIT#1

みなさんこんにちは。

北村直也です。

視覚障害関係の連載を担当させていただきます。よろしくおねがいします。

まずは視覚障害とは切っても切り離せないITとのことについて、私の経験も交えながら、晴眼者は体験したことのないようなこともたくさん紹介していきたいと思っております。しばしお付き合いください。


見えないことは人生にマイナスか?

見えないことについて一目で抱いてしまうネガティブなイメージ

さて、こちらのページを訪れている方々は、何かしらの障害について興味をお持ちの方だと思います。

そんな皆さんは、「視覚障害」、「見えない」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?

ひょっとしたら、「見えなくてかわいそうとか、「私だったら無理」、「よく頑張ってる」という、少しネガティブな印象を抱いてる方もいらっしゃるのではないでしょうか。別に、謝ることではありません。実際、自分ができていることをできない人がいるとすれば、かわいそうだとか自分にはきついと思ってしまう物です。

自分は見えるのが当たり前だったし、メディアはまるで見えないことに限らず障害者はかわいそうといった表現をする。そんな中だからこそ、ネガティブなイメージが独り歩きしてしまうのは致し方ないことだと考えています。


では、実際に視覚障害を持つ私はネガティブなのか?

もし、実際に視覚障害の人と多く接する機会がある方々は、自然と上記のようなネガティブなイメージは取り払われるはずです。なぜなら、視覚障碍者はただ見えないだけで、それ以外は同じだからです。

結局、実際に接してみないと人ってわからないものなんです。

ということで、視覚障碍者と接する機会がどうしてもないというなら、私の連載を通して徐々にネガティブなイメージをなくしていってほしいと思います。

やっとここで、私について書きます。

私は先天性の視覚障碍者で、視力は両目0のいわゆる全盲です。25歳で、中学校までを地元の普通学校で過ごし、高校・大学を視覚障碍者専用のところに通い特殊な教育を受けた後、大手企業の特例子会社で2年間エンジニアをしておりました。

と聞くと、

「普通じゃねえか」

という突込みが飛んできそうですね(笑)。

普通じゃないところは、

大学4年生から会社員を経て今に至るまで、声優・ナレーターとして声の表現の世界で活動をしていること、2019年5月に作家デビューしたことです。

つまりは、私はエンジニアであり、クリエイターであり、芸能人なんです。

どう?見えていてもこんなことできちゃったりするんですよね。

なんなら、芸能活動にいたっては晴眼者相手に、視覚障碍者たった一人で挑んでます!

たしかに見えなくてできないことはありますが、だからといって自分がかわいそうだとか、不幸だとは物心ついたときからは思っていません。

冗談で、「かわいい女の子かあ。見てみたかったな」ていうことはありますし、

「見えてたらもっといろんな遊びできたのになあ」

と思うことはありますが、まあ冗談だし、いずれなんとかなるだろうと思っています。


ITが支えになっている

ワープロとの出会い~同じ言葉でしゃべれているような感覚

さて、私がこんなに今を楽しむことができていることには理由があります。

それは、この連載を書くのも、twitterを更新するのも、事務所からの連絡も、私と相手をつなぐパソコンという存在があるからです。

晴眼者のみなさんにとっては、パソコンやスマートフォンを使うというのは、アナログがデジタルになったという感覚かもしれません。

しかし、全盲で普通の文字が扱えない私には、パソコンとの出会いは衝撃でした。

当事小学校低学年だった私は、勉強ではほとんど点字を使用していました。当然、クラスメイトは点字なんて勉強しないから読めるわけありません。逆に、私は普通の文字を勉強はしていましたが、読めるようにするには特殊な紙に大きく書いてもらう必要があり、クラスメイトと手紙のやり取りなんてしたことがありませんでした。

そんなある日、盲学校の先生からパソコンについて教わる機会があり、文字入力の基本を聞いて、ひたすらキーボード練習をしていました。

最後に、

「キーボードにかけるカバーあるじゃないですか。そこに点字シール張ればキー配置を覚えられるよ」

と先生に言われ、両親に協力してもらいながら製作しました。

それは小学校で始まるパソコンを使う授業の準備のためでもありました。

パソコンの授業の日。クラスメイトと別メニューで、パソコンで文字を書く練習をしていたんです。

そのとき書いたのが、

「あした、きょうしつに1おくえんもってこい」

という文章でした。当事の私は何を考えていたのでしょうか(笑)。

書き終わり、私の画面をのぞき込んだクラスメイトや先生たちが、

「なんだこれ!」

「なんかすごいこと書いてある」

と、驚いていて、まあ半分怒られ、半分笑われたわけですが、ふと思いました。

「パソコンを使えば同じようにみんなと文字で会話ができる」

そう思ったとき、見えないことによって生まれていた一つの障壁画なくなったような気がしました。


あれから15年経って世界は変わった

気づけばワープロを知ってから15年。世界はIT革命に突入し、新商品が飛ぶように発売され、新しい研究論文が何本も世に出ています。

その光景は私にとって無視できるものではなく、飛び交う新商品が私の生活を便利にしてくれることがたくさんあります。

私が新しいもの好きだというのもあり、積極的に使用しているうちにいろいろなことが変わってきた気がします。


ITは見えないということを補ってくれる

様々な商品が発売される中で一つ言えることは、ITは決して見えなくなった目を見えるようにするものではない、それでも見えないということを補うツールがたくさんあるということです。

たくさんのITに満ち溢れた世界に生きている私は、見えないことでできないなら、人か機械の力を借りるようにしています。その力があるからこそ、私は見えないことでネガティブな気持ちにはなりません。

視覚障碍者支援の商品を開発してくださる企業の方々、研究を進めてくださっている方々、皆さんに感謝をしながら、私は今日も明るく生きています。

第2回目以降からは、実際に私が使っている技術について解説していきます。

それでは、最後まで読んでくださりありがとうございました。


この記事を書いた人

北村直也

先天性の全盲。勉強ができなくて劣等感を抱えていた時演技に出会い、声優を目指す。 視覚障害による困難をitで乗り越え、道を開いた経験を生かし、障害を持つ人の職域拡大事業を立ち上げ予定。しかし、中身ははちゃめちゃでラノベと野球好きな男の子

Twitter:@noy_0207



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