画面が見えなければ音声読み上げとキー操作でPCを使おう|直也の視覚障害とIT#2

みなさんこんにちは。直也です。

私はネットで人の配信を見たり、

都心で行われるイベントや交流会に積極的に参加しているのですが、高確率で初対面の人に聞かれることがあります。

「どうやってTwitterしてるんですか?」

「私が送ったメッセージしっかり返していただいているんですがどうしているんですか?」

などなど、つまりはPCやスマートフォンを、画面が見えないのにどう使用しているのかということです。

今回はそのからくりについて紹介します。

また、今回はPC編、次回はスマホ・タブレット編でお送りします。


全盲者がPCを使う上での二つの工夫

画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)の導入

突然ですが、視覚障碍者に対するイメージとして、こんなことをよく言われます。

「目が見えないっていうことは耳がいいんですよね?」

「見えない分、よく聞いていると思う」

これらのイメージは間違っているようで合っているところもあります。


実際に耳がいいかは人によるのですが、見えない分を聞いてカバーしているのは事実です。

PCを使うときも同じで、画面が見えないから画面を読み上げてくれるソフトを使用して操作するようにしています。

これらのソフトをまとめて、「スクリーンリーダー」と呼びます。まあ、そのままですよね(笑)


スクリーンリーダーは、意外と長い歴史があり、90年代には存在していました。

そして、ITの発達が急激に進む中、スクリーンリーダーの開発も盛んになり、今ではオープンソースで無料のスクリーンリーダーなんかも登場しています。

今回はスクリーンリーダーの細かい部分については省略しますが、スクリーンリーダーユーザー独特のことについて後述します。


マウスは使わずすべてキー操作で

さて、画面を読み上げてくれることはわかったと思いますが、もう一つ重要なことがあります。

それは、「全盲者はマウスを使わない」というところです。

実は、私自身盲学校でPCの使い方を教えてもらうまで、キー操作ができることを全く知りませんでした。

私のために視覚障碍者の団体などに入っていた母でさえ、

「マウスポインターっていうのを見なければいけないから、なおにPCを使うのは難しいかもね」

と言っていました。

しかし、実はそうではないんです。

キーボードで文字を書いて、振り返りたければ上下左右の矢印キーで操作でき、カーソルを合わせて文字の挿入・削除もできますし、シフトキーと組み合わせれば範囲選択をして、いわゆるコピペなんかも自由にできます。

実際、その操作で今こうして連載を書いているわけです。

なにかメニューを出したければaltキーやアプリケーションキーといったボタンを押せば出てくれますし、それらも矢印キーの操作で選ぶことができます。

ここが全盲ユーザーの特徴です。


画面を見る人にとってのスクリーンリーダーの衝撃3選

さて、ここからは、実際にスクリーンリーダーを初めて知った人たちの反応についてご紹介します。


1.音声読み上げが早い

まずは、音声読み上げの早さです。

私のようなヘビーなユーザーに撮ってはふつうに聞き取れてしまうというか、日常で使ってる音声読み上げのスピードを画面を見ている方々に聞かせると、必ず「早い」と言われます。

正直、私も早いと思います。

というのも、私自身は最初からそのスピードに慣れていたわけではないからです。

最初は日常会話よりすこし早いぐらいかなぐらいのスピードで始めていたのですが、徐々に長い文章などを読むようになってくると、スピードが遅いのが煩わしくなり、徐々にチャレンジで上げていくようにしました。

それを繰り返しているうちに、ソフトで扱える最高速度になっていたというのが正直なところです。

そのため、普段音声読み上げを使っていない方々が、私の普段のスピードを速いと思うのは自然なことです。

ちなみに、私の友人に、視覚障害に興味を持つ晴眼者の人がいるのですが、スマホに標準でついている読み上げ機能をときに起動させて遊んでいるようで、最初は聞き取れなかった早さでも今は聞き取れるようになったそうです。

結局は慣れなのかもしれません。


2.漢字の読み間違いがある

これはTwitterで私が発信するのにとても都合がいいネタなのですが、いくら画面を読み上げてくれるとは言え、たまに読み間違いをします。

ここはふつうの人間と同じで、固有名詞なんかは弱いです。

一つ、みなさんになじみのある出来事を紹介します。

2019年4月1日、1か月後に元号が「平成」から、「令和」になることが発表されました。

その直前、スクリーンリーダーの開発に携わる方が、

「新元号が発表されたら場合によってはスクリーンリーダーに対応させなければ」

と言っていたのです。

実際令和と打つと、「ヨシカズ」と読むものがあると確認されました。

そして、新元号が発表されてから数時間後、一つの開発メーカーが、「令和の読み上げに対応しました」とアナウンスを出していたんです。

このように、固有名詞は読めないものもあります。

そして、時代の流れに合わせて開発者が読めるようにすることもあります。

「AKB48」なんかは、「エーケービーヨンジューハチ」と読まれるのが当たり前でしたが、今では

「エーケービーフォーティーエイト」

と読むソフトも増えています。

このネタは、意外と知られていないようで、発信すれば受けがいいですし、最近はライブ配信アプリなんかについているコメント読み上げ機能で実感する人も増えていて、話題としてはかなり面白いです。


3.意外と絵文字の読み上げと見た目が違う

これも読み方の話ですが、絵文字の見た目と読み方があまり合っていないことがあるようです。

中にはiOSの音声読み上げでとんでもない読み方をする絵文字があります。

それは、

😀

です。

これ、どう読むと思いますか?

じつは、

「笑っている顔 目が笑っていない」

と読むんです(笑)

つまり、この読みをまともにとらえてしまうと、

「ああ、この人は笑顔を作ってるな」

「作り笑いだな」

「怖い先生がたんたんと話してる感じだな」

と思ってしまう可能性があるんです。

実際、私自身は深読みをするタイプでして、

相手にとっては面白くなかったんだなと思うことがあります。

しかしですね、その話をライブ配信で晴眼者の方々にしたときに、とても驚かれました。

どうやら、見た目的にはふつうに笑っているらしく、笑っている意味で当たり前のように使うとかで。

だから気にしなくていいよと言われました。

というように、たまにそういうことが起こります。

ちなみに、どうやらそうなっているのは詳しく読み上げようとするiOSの弊害らしく、PCでやると、

😀も、

😆も、

😃も、

全部「笑顔」と読みます。


画面を見る人とスクリーンリーダーユーザーが一緒に仕事をすると起きる問題

こちらは、すこし実感がわかないかもしれませんが、実話としてお伝えします。


1.エクセルのセルで支持をするか、内容で支持をするか

音声で聞いてエクセルを使用する場合、内容は一つずつキーを押さなければ確認できませんが、セル番地であれば、エクセルの構造がわかってさえいれば簡単にたどり着くことができます。

「A3セルに行ってください」

というのと、

「氏名と書いてあるセルに行ってください」

というのは、実は速度が全然違います。

ただ、どうやら見ている側からすると、内容で言いたくなる方がいるんです。

とくに、読み上げユーザーに初めて教えるみたいな人はそういう傾向がありました。その点からも、注目しているところが違うのでしょう。


まとめ

さて、画面が見えない人たちがどのようにPCを使用しているかご理解いただけたでしょうか。

この件については、スクリーンリーダーというものを知らなかった人たちにはたくさんの衝撃があるようで、私自身も、自分が今やっていることって当たり前ではないんだと感じることがあります。

この連載のテーマとして、視覚障害のネガティブなイメージをITで無くすことがありますので、具体的な機能よりも、なかなか面白かった体験談を中心に記述しています。

もし、この連載がきっかけで興味をお持ちになった方々は、グーグルで検索してみたり、私のTwitterにお声掛けいただければと思います。

次回以降もきっと、知らなかったこと・興味はあったけど聞けずにいたことなどがたくさん出てくるかと思います。

私の記事ですこしでも知っていただければとてもうれしいです。

それでは。


この記事を書いた人

北村直也

先天性の全盲。勉強ができなくて劣等感を抱えていた時演技に出会い、声優を目指す。 視覚障害による困難をitで乗り越え、道を開いた経験を生かし、障害を持つ人の職域拡大事業を立ち上げ予定。しかし、中身ははちゃめちゃでラノベと野球好きな男の子

Twitter:@noy_0207


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